【歯科医監修】知っておきたい!虫歯の進行段階と進行速度を遅くする方法
25.10.25
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【歯科医監修】知っておきたい!虫歯の進行段階と進行速度を遅くする方法
【虫歯の進行速度を理解するための基礎知識】
◇虫歯の進行段階とは?
虫歯(う蝕)は、歯の表面から少しずつ内部に向かって進行していきます。進行度によって、治療法や感じる症状が変わるため、段階ごとに理解することが大切です。一般的に5段階に分けられます。下記に詳しくまとめます。
①CO(初期う蝕・脱灰)
・エナメル質の表面が酸によって溶け始めた状態
・白く濁ったり、薄い茶色に見えることがある
・自覚症状がほとんどない
・フッ素や正しいケアを継続すれば再石灰化を期待できる(=削る治療不要)
②C1(エナメル質の虫歯)
・エナメル質に小さな穴ができた状態
・冷たいものや甘いものでしみることもあるが、痛みは少ない
・フッ素や正しいケアでの経過観察か削って詰め物をする簡単な治療で対応可能
③C2(象牙質まで進行)
・エナメル質を超えて象牙質に達した状態
・甘いもの、冷たいもの、温かいものでしみたり、痛みが出る
・噛むと痛みや違和感を感じることもある
・削って詰め物や被せ物をする治療
④C3(歯髄まで進行)
・虫歯が神経(歯髄)にまで及んだ状態
・強いズキズキとした痛み、夜間痛、噛んだ時に激痛が出る
・神経の治療(根管治療)が必要になる
・治療期間も費用の負担も増える
⑤C4(歯根だけ残る)
・神経が壊死し、一時的に痛みが和らぐ
・歯冠(歯の上の部分)がほとんど失われ、歯根が残った状態
・膿が溜まって腫れたりすると再び痛みが出ることもある
・多くは抜歯となり、その後治癒を待って、ブリッジや入れ歯、インプラント治療が必要
このように、虫歯は自然に治ることはなく、放置すると確実に進行していく病気です。進行度が進むほど治療が大がかりとなり、歯の健康寿命が短くなってしまいます。

◇歯の進行速度に影響を与える要因とは?
虫歯は同じ段階から進行がスタートしても、人によって進行速度ははやかったり、遅かったりとさまざまです。その差を生むのが次のような要因です。
①唾液の量と質
・唾液は酸を中和し、歯を修復する『再石灰化』を助けます。
・唾液の分泌量が少ない人は虫歯のリスクが上がります。
②食習慣
・甘いものや炭酸飲料などを頻繁に摂ると口腔内が酸性に傾く時間が長くなるため、虫歯菌が活発になります。
・間食のだらだら食べ、飲みや寝る前の飲食は要注意です。
③歯磨き習慣
・磨き残しが多いと、プラークや歯石が溜まり、虫歯菌が活発になります。
・特に夜寝る前の歯磨きを怠ると、寝ている間は唾液の量が減るため虫歯が進行しやすくなります。
④歯の形や質
・エナメル質が薄い人や奥歯の溝が深い人は虫歯になりやすいです。
・遺伝や体質的な要因も少なからずあるでしょう。
⑤生活習慣や体調
・ストレス、喫煙、薬の副作用による口渇、免疫力の低下なども影響します。
・小児は特に進行がはやい傾向にあります。
同じC1の状態の虫歯でも、2ヶ月でC2に進行してしまう人もいれば、数年の間ほとんど変化がない人がいるのはこれらの要因が関係しています。
【虫歯の進行速度がはやくなる原因とは】
◇食習慣の影響
①砂糖の摂取量と頻度
・虫歯菌は糖をエサとして酸を作り、歯を溶かします。
・甘いお菓子や炭酸飲料などを一度にたくさん食べるより、だらだらと少量を食べたり飲んだりし続ける方が虫歯になるリスクは高まります。
②飲み物の種類
・炭酸飲料やスポーツドリンク、甘いコーヒーなどは酸性度が強く、虫歯のリスクを高くします。
③食べるタイミング
・晩酌などで就寝前に飲食をして、そのまま寝てしまうことはないですか?寝ている間は唾液の量が減るため虫歯になりやすい時間帯です。必ず寝る前には歯磨きをしましょう。
④食べ物の性質
・グミやキャラメルなど粘着性の強い食品は歯に残りやすく、虫歯菌の活動時間を長くします。
⑤食生活全体のバランス
・規則正しい食事リズムと栄養バランスが、虫歯予防にもつながります。

◇口腔衛生の重要性
①プラークの蓄積
・歯の表面に残った汚れは虫歯菌の栄養源となります。ブラッシング不足でプラークが蓄積すると細菌が酸を出して、歯のエナメル質を溶かし、虫歯が進行していきます。
②歯磨きの質とタイミング
・『磨いているつもり』でも磨き残しがある状態であれば意味がありません。特に寝る前の歯磨きを怠ると寝ている間は唾液によるバリアも弱くなるため、虫歯菌が活発になり、進行がはやまります。
③フッ素活用の有無
・フッ素入り歯磨き粉を使わない場合、再石灰化が十分に促されず、虫歯が進行しやすくなります。フッ素は歯の強化には欠かせないものです。
④補助清掃用具を使わない習慣
・歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れまでは落としきれません。デンタルフロスや歯間ブラシなどを使用しましょう。
⑤定期検診を受けない
・自分では気づきにくい初期虫歯などのちょっとした異変を放置すると知らない間に状態が悪化してしまいます。歯科医師や歯科衛生士によるチェックや専門的なクリーニングを受けないことは進行のリスクを大幅に高めてしまいます。

◇生活習慣とストレス
虫歯は単に『歯磨きを怠ったから』だけでなるわけではなく、生活習慣やストレスが影響している場合もあります。日常のちょっとした習慣や心理的な負担が、口腔環境に悪影響を及ぼして、虫歯の進行に関わることもあるのです。
①食生活の乱れ
・甘いものを食べたり、間食が多いと、口腔内が酸性の状態が長くなり、虫歯のリスクが高まります。
・だらだら食べ、飲みは危険です!唾液の力で中性にするタイミングが短くなり、虫歯の進行を加速させます。
・夜遅い時間の飲食や不規則な食生活も口腔内のバランスを乱す要因になります。
②寝不足や不規則な生活
・睡眠が足りないと免疫力が低下し、虫歯菌や歯周病菌に抵抗する力が弱まります。
・夜更かしや不規則な生活は唾液の分泌リズムを乱して、唾液による自浄作用や緩衝能が下がってしまいます。
③喫煙や飲酒習慣
・喫煙は唾液の分泌量を減らし、歯肉の血流も悪くなり、虫歯や歯周病のリスクを高めます。
・アルコールも種類によっては酸性度が高い飲料の一つです。細菌の活動を活発にさせてしまいます。
④ストレスの影響
・ストレスが強いと自律神経が乱れてしまい、唾液量が減少することも。
・ストレスによる『くいしばり』や『歯ぎしり』は歯に過剰な負担を与え、ヒビや破折を招く可能性があります。
・ストレスで甘いものをたくさん食べる『ストレス食い』も虫歯のリスクを高めます。
規則正しい生活とストレス管理で、口腔内を健康に保ち、虫歯のリスクを大幅に減らすことにつながります。

【虫歯の進行速度を遅らせる方法】
①正しいブラッシング習慣
・1日2〜3回行いましょう。特に寝る前の歯磨きは丁寧に!!
・歯と歯肉の境目を意識して歯ブラシを当てましょう。
・フッ素入りの歯磨き粉を使用しましょう。(成人は高濃度フッ素配合:1450ppmのものを選ぶとさらに効果アップ!)
②補助的清掃用具の使用
・歯ブラシでどれだけ丁寧に磨いても、40%ほどは磨ききれないと言われています。その部位が『歯と歯の間』です。歯間部はデンタルフロスや歯間ブラシを使用しないときれいにすることができないのです。
・せめて寝る前の歯磨きの時は補助的清掃用具を併用して磨き残しがない状態にしましょう!
③食習慣の改善
・砂糖の摂取を控えましょう。:虫歯菌のエサとなる糖を控えることで虫歯になるリスクが下がります。
・だらだら食べ、飲みをやめる。:規則正しい食事の間隔を設定することは唾液の緩衝能の時間を確保することができます。
・キシリトールの活用をする。:キシリトールはミュータンス菌の働きやプラークの付着を抑制したり、唾液の分泌を促進する働きがあるため、虫歯予防には必要不可欠なものです!ガムやタブレットなどで間食の代わりに摂取したり、食後や口の乾きが気になる時に摂取すると効果的です。
④唾液を味方にする
・よく噛んで食べることで唾液の分泌を促進させましょう。
・水分補給やキシリトール摂取で、口腔内の乾燥を防ぎましょう。
・ストレスや喫煙は唾液の分泌量を減らしてしまうため、注意が必要。
⑤定期的な歯科受診
・3〜6ヶ月に1回は定期検診を受けましょう。:早期発見、早期治療が大切です!
・フッ素やシーラントなどの予防処置で進行を食い止めましょう。:特に小児に効果的!
・初期の虫歯であれば、削らずに済むことが多いです。
⑥生活習慣の見直し
・十分な睡眠とバランスの取れた食事で免疫力を高めましょう。
・ストレス管理で歯の負担を減らしましょう。(くいしばりや歯ぎしりによる負担)
・喫煙や過度な飲酒は控えましょう。

【虫歯の進行速度とその影響】
虫歯の進行速度は人それぞれ異なります。
◇進行段階ごとの治療法
①CO(初期虫歯、脱灰):症状はほとんどなし、歯の表面に白濁や薄い茶色の変色が起きる。
・削らずに経過観察・フッ素で再石灰化の促進・歯磨き、食生活の改善で進行を防ぐ
②C1(エナメル質虫歯):痛みは少ない。冷たいものでしみることも。
・フッ素で再石灰化の促進・進行している場合は削って詰める
③C2(象牙質まで進行):甘いもの、冷たいものでしみる、噛んだ時に痛みや違和感がある。
・虫歯の部分を削って、インレーやレジンで詰める
③C3(神経まで到達):ズキズキした強い痛み、何もしていなくても痛む。
・神経を取る治療(根管治療)が必要となる。その後、クラウンなどの被せ物を入れる。
④C4(歯根だけ残る):神経が壊死して、一時的に痛みが和らぐ。排膿や腫れの症状が出ることも。
・多くは抜歯が必要となる。その後、治癒を待ってブリッジや入れ歯、インプラント治療に移る。
虫歯は初期であれば削る必要がなかったり、削る量が少なく済みますが、進行すればするほど治療は大がかりとなり、歯の寿命も短くなります。
【乳歯と永久歯の虫歯の進行速度の違い】
乳歯と永久歯では虫歯の進行スピードに大きな違いがあります。
①歯の構造の違い
・乳歯:エナメル質が薄く、象牙質も柔らかい。神経までの距離が近い。
・永久歯:エナメル質が厚く、象牙質も硬い。
②虫歯の進行速度
・乳歯:はやく進行する。
・永久歯:適切なケアで進行を遅れさせやすい。
③症状の出方の違い
・乳歯:進行がはやいため、痛みを感じることが多い。(神経への到達スピードがはやい)
・永久歯:初期は症状が出ないことが多い。
④治療上の注意点
・乳歯:乳歯の虫歯は永久歯の健康に影響することもあるため早期対応が重要
・永久歯:初期段階であれば削らずに済んだり、軽い処置で治療が可能

【まとめ】
虫歯は初期であれば削らずに済むことが多く、進行を遅らせることが可能です。しかし、放置すると治療は大がかりとなり、歯の寿命も短くなります。日々の丁寧なセルフケアや生活習慣の改善、定期検診で虫歯の進行速度を遅らせることができます。乳歯、永久歯いずれも早期対応が重要です。