親知らずはどうして虫歯になりやすいの?歯科治療のすすめ
25.12.25
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親知らずが虫歯になる原因とリスク
<親知らずが虫歯になりやすい理由>
①奥にあり、歯磨きしづらい
親知らずは一番奥に生えるため歯ブラシが届きにくく清掃不良になり、汚れや歯垢がたまりやすいです。
②半分埋まっていることが多い
親知らずが一部だけ生えている「半埋伏」と呼ばれる状態だと、歯ぐきとの隙間に食べかすが挟まりやすく、
菌が入り込みやすいので虫歯や歯周病の原因になります。
これが原因で「智歯周囲炎」と呼ばれる炎症も起こります。
③斜めや横向きに生えることが多い
親知らずは特に生え方が不規則でまっすぐ生えてこないことが多く、正しい位置に生えない場合虫歯になりやすいです。
隣の歯(第二大臼歯)との間にすき間ができ汚れがたまりやすいです。

<虫歯が進行するリスク>
虫歯を放置すると、進行が早くなり、痛みや腫れを引き起こす智歯周囲炎になります。
特に親知らずはその位置から周囲の歯に影響を与え、他の歯も虫歯になるリスクを高めます。また、虫歯が進行すると、
口の中だけでなく全身にも悪影響を及ぼすことがあります。
もし症状があれば歯科医院は予約制のところがほとんどなので早めに診察して治療をおすすめします。
親知らずの虫歯の症状
<初期症状とその見分け方>
親知らず(智歯)のトラブルの初期症状は、痛みがないことが多いです。
最初は軽くても、放置すると悪化しやすいので注意が必要です。

親知らずの初期症状
①奥歯の奥にうずくような違和感
まだ完全に生えていない段階でも、「奥の歯茎がムズムズする」「押される感じがする」など、違和感を感じることがあります。
②歯ぐきの軽い腫れ・赤み
親知らずが半分だけ顔を出すと、その周囲の歯ぐきが腫れやすくなります。
「腫れぼったい感じ」「歯ぐきがぷっくりしている」などが見られることも。
③歯ぐきの痛みやしみる感じ
食べ物が当たると痛い、冷たいものがしみる、など。
歯ぐきが炎症を起こしていたり、親知らずや隣の歯が虫歯になり始めているサインかもしれません。
④口を開けにくい、あごが重い
歯ぐきの炎症が広がると、顎の筋肉にも影響して口が開きづらくなることがあります。
⑤噛んだときの違和感
親知らずが少しずつ出てくると、咬み合わせに違和感を感じたり、物がうまく噛めなくなることもあります。
⑥口臭・不快な味
親知らずの周りに食べカスや細菌が溜まりやすく、口臭や苦いような味を感じることがあります。
また、初期症状を放置すると、以下のような問題に進行する可能性があります。
・強い腫れや痛み(智歯周囲炎の悪化)
・隣の歯が虫歯や歯周病になる
・噛み合わせや歯並びが乱れる
・頬や喉の腫れ、発熱、開口障害 など
<進行した虫歯の症状>
虫歯が進行すると鋭い痛みを感じることが多く、特に冷たいものや甘いものを食べたときに強く現れます。
食事中に噛むと違和感を感じたり歯の色が黒ずんだりします。
さらに虫歯が大きくなり進行するとズキズキと激しく痛むようになり温かいものでもしみるようになります。
噛むと強い痛みがあり、顔や頬にまで響くような痛みがあることがあります。
親知らずの虫歯を放置するリスク
<痛みの悪化と生活への影響>
親知らずの虫歯を放置すると、痛みが徐々に悪化し、日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。特に、炎症があるのに放置することは危険です。
1,虫歯や歯周病が進行する
親知らずは歯ブラシが届きにくいため、虫歯や歯周病になりやすい。
放置すると、虫歯が神経まで進行したり、根の先に膿がたまる。
隣の健康な奥歯にも虫歯や歯周病が広がる可能性あり。
2,智歯周囲炎を繰り返す
親知らずの周りに細菌や汚れが溜まり炎症を起こす。
初期は軽い腫れや痛みでも進行すると、
・顔が腫れる
・口が開きずらい
・発熱、倦怠感
・飲み込みにくい、喉の痛み
➡️ 重症化すると、顎の骨や喉、首のリンパ節に炎症が広がり、入院が必要になるケースも。
3,歯並びや噛み合わせが乱れる
親知らずが横向きや斜めに生えていると、前の歯を押して歯並びがガタガタになることがあります。
特に矯正後の人は要注意です。
4,顎関節への負担・頭痛や肩こりの原因に
噛み合わせが悪くなることで、顎関節にストレスがかかり、
・顎の違和感・痛み
・頭痛、肩こり、首の痛みなど、全身症状に波及することも。
5,副鼻腔炎(上の親知らずの場合)
上あごの親知らずが、副鼻腔に近い位置にあると、感染が副鼻腔に波及して
・鼻づまり
・頬の奥の痛み
・どろっとした鼻水
などの副鼻腔炎(蓄膿症)を起こす場合があります。
6,全身への影響(敗血症など)※まれに重篤化
親知らずの感染が血流に乗って、全身に広がる(敗血症)ケースもまれにあります。
免疫力が落ちている人、糖尿病・心臓病などの基礎疾患がある人は特に注意が必要です。
<隣接歯への影響と感染症のリスク>
① 隣の歯が虫歯になる
親知らずの虫歯部分が、第2大臼歯の側面と密着していると、
→ 隣の歯も虫歯になる確率が非常に高いです。
特に、歯と歯の間の虫歯は発見が遅れやすく、気づいたときには
神経に達している、根管治療(神経を取る処置)や抜歯が必要というケースも。
⚠️親知らずの虫歯1本のせいで、健康な奥歯1本を失うリスクがあるということです。
② 隣の歯が歯周病になる
虫歯や汚れがたまりやすい親知らず周辺の炎症が広がると、隣の歯の歯ぐきや骨にもダメージが及びます。
結果として、歯ぐきの腫れや出血、歯がグラグラする、歯を支える骨が溶ける
などの重度の歯周病(歯槽膿漏)に進行することも。
③ 隣の歯の根っこが吸収・圧迫される
虫歯で崩れた親知らずが隣の歯の根元を押す・侵食することで、根が変形・吸収されたり神経にダメージが加わることがあります。
➡️ これは不可逆的(元に戻らない)損傷になることが多く、歯の寿命が縮む原因に。
④ 治療が【非常に難しくなる】
親知らずの虫歯や周囲の炎症があると、隣の歯を十分に清掃・治療できない状況になります。
特に、親知らずがあることで、
隣の歯に被せ物(クラウン)を作るのが難しい、根管治療がやりにくい といった治療をしたくてもできないことも。
親知らずの虫歯を放置すると、隣の歯への感染症の原因になることがよくあります。
特に親知らずが半埋伏や横向きに生えている場合、虫歯菌や炎症が隣の歯に直接感染しやすく、
深刻なトラブルに発展する可能性があります。
親知らずの虫歯治療法
<虫歯の進行度に応じた治療法>

【C1】表面(エナメル質)だけの浅い虫歯
症状: ほぼ無症状/冷たいもので少ししみる
✅ 治療法:
- 虫歯部分を軽く削ってレジン(樹脂)で詰める
- 親知らずがまっすぐ生えていて、磨けている場合に限り保存が可能
⚠️ 生え方が悪ければ、早期でも抜歯を検討
【C2】象牙質まで進行した虫歯
症状: 冷たいもの・甘いものでしみる/軽い痛み
✅ 治療法:
- 虫歯部分を削って詰め物(インレー)やレジン修復
- 歯の形や位置によっては、治療器具が届きにくく、精密な治療が困難
- 隣の歯を傷つけるリスクもあるため、抜歯の方が安全と判断されることが多い
【C3】虫歯が神経(歯髄)まで達している
症状: ズキズキした激しい痛み/夜間の痛み
✅ 治療法:
- 根管治療と被せ物
- ただし親知らずは
根の形が複雑で治療が難しく治療しても再発しやすい
➡️ 多くのケースで抜歯が選ばれます
【C4】虫歯が歯の根まで進行、歯冠崩壊
症状: 歯がボロボロ/痛みが一時的に消えていたが膿や腫れが出る
✅ 治療法:
- 抜歯がほぼ確実
- 放置すると、顎の骨に感染が広がったり、顔が腫れたりするリスクあり
なぜ親知らずは「抜くこと」が多いのか?
・治療しづらい場所にある
・生え方が悪い(横向き・斜め・埋まっている)
・再発リスクが高い
・隣の健康な歯に悪影響を与える
・噛み合わせ、歯並びに関与しない
<抜歯の必要性とその判断基準>
親知らずを「抜くべきか」「残すべきか」の判断は、歯科医がいくつかの明確な基準に基づいて行っています。
多くの場合、“痛くなってから”ではなく、“将来のトラブルを防ぐため”に抜くという「予防的抜歯」が選ばれます。
抜歯するケース
・生え方が悪い
・虫歯や歯周病がある
・清掃が困難で不衛生
・隣の歯に悪影響を与えている
・痛みや腫れを繰り返している
・将来的に問題が起こる可能性が高い
抜歯しなくてもいいケース
・真っ直ぐ生えている
・噛み合う相手の歯がある
・歯磨き、フロスが届く
・将来的にブリッジ、義歯の支えに使える
ただし、これらは全体の2〜3割以下で、ほとんどの親知らずは抜歯候補です。
親知らずの抜歯について
<抜歯の手順と注意点>
① 初診・診断(事前検査)
- レントゲンまたはCTを撮影
- 親知らずの位置、生え方、神経や血管との距離を確認
- 抜歯の難易度・必要性・リスクを判断
📌 斜め・横向き・埋まっている親知らずは、専門の口腔外科医が担当する場合もあります。
② 抜歯当日の流れ
麻酔注射の前にジェル状の麻酔を歯ぐきに塗って感覚を鈍らせます。
その後、局所麻酔注射で痛みを完全にブロックします。
麻酔が効けば、痛みは感じません。
②歯ぐきの切開(※埋まっている場合)
完全に埋まっている親知らずは、歯ぐきを少し切開して歯を露出させます。
③歯の分割・抜歯
歯がそのまま抜けない場合は、ドリルで歯を2〜4分割してから取り出します。
必要に応じて、骨を一部削ることもあります(特に水平埋伏の場合)。
📌 この工程があると、抜歯に20〜40分かかることもあります。
④歯の摘出・洗浄
分割した親知らずを丁寧に摘出し、傷口を生理食塩水で洗浄します。
骨片や感染源が残らないように徹底的に清掃。
⑤縫合(必要な場合)
傷口が大きい、または出血リスクがある場合は、糸で縫合します。
自然に穴が塞がることも多いので縫わない場合もあります。
⑥止血・ガーゼで圧迫
ガーゼを噛んで30~60分圧迫止血。
血が完全に止まるまで安静に。
抜歯にかかる時間は、まっすぐ生えていて簡単なものであれば10分程度。
斜めや横向きに生えていたり埋まっていて歯茎を切る場合は30分から一時間程度かかります。
<当日の注意点>
親知らずを抜いた当日は、適切なセルフケアを行うことで、痛みや腫れ、合併症(ドライソケットや感染)を防ぐことができます。
ガーゼは30〜60分しっかり噛む
・抜歯後、傷口を止血するためにガーゼを噛みます。
・途中で外さず、しっかり圧迫することが大切です。
⚠️ガーゼをすぐ外すと、出血が止まらなかったり、血餅(かさぶたのようなもの)がうまくできません
強いうがい・口をゆすぐのはNG(最低24時間)
・傷口にできる血餅を守るため
・うがいや強い吐き出し動作で血餅が取れると「ドライソケット」の原因に!
⚠️ドライソケットになると、強い痛みが数日続くことがあります。
激しい運動・長風呂・サウナ・飲酒はNG
・血流が良くなると再出血や腫れがひどくなることがあります。
・抜歯当日は、安静第一に過ごしましょう。
喫煙は厳禁(最低48時間)
・タバコは血流を悪くし、血餅の形成を妨げる
・ドライソケットや感染のリスクが急激に上がる
⚠️喫煙者は、抜歯後の治りが遅い傾向にあります
痛み止め・抗生物質は指示通りに
・麻酔が切れる前(30分〜1時間後)に痛み止めを先に飲むと効果的
・処方された薬は途中でやめずに最後まで飲む
食事は麻酔が切れてから/柔らかいものを反対側で
・麻酔が効いている間に食事すると、唇や舌を噛んでしまったり、やけどのリスクがあります。
・食事は柔らかいもの(うどん、スープ、おかゆなど) 熱すぎないもの。抜いた側とは反対側で噛みましょう。
抜いたところは触らない/吸わない/すすらない
・舌や指で触るのは絶対NG
・ストローやタバコの「吸う動作」も避ける(血餅が取れる原因に)
出血が止まらないときの対処
・軽く出血するのは正常です。(赤い唾液が混じる感じ)
・出血が多い場合は、新しいガーゼやティッシュを傷口にあてて30分しっかり噛んで圧迫してください。
それでも止まらなければ歯科医院に連絡しましょう。
入浴は短時間・シャワー程度で済ませる
長湯は体温・血圧を上げて出血しやすくなるため、当日は軽くシャワーのみが理想
就寝時は枕を高く/横向きに寝ない
・枕を高めにして頭を上げると、腫れや出血が抑えられる
・抜いた側を下にして寝ると、血が溜まって腫れが強くなることも

<抜歯後のケアと回復期間>
2~3日目のケア(腫れのピーク)
顔の腫れ・違和感はあります。
特に下の親知らず抜歯ではほぼ確実に腫れますので心配はありません。
患部を冷やすのは当日〜翌日までにしましょう。冷やしすぎもよくないです。
痛みが続いても焦らず、痛みどめを飲んでコントロールしましょう。
4日目~1週間のケア
腫れや痛みが徐々におさまってきます。
歯磨きは患部以外はしっかり丁寧に磨き、患部周辺は優しく磨きましょう。
強いうがいは避け、優しくゆすぐ程度にしましょう。
1週間後:抜糸(縫合した場合)
抜歯後に縫ってある場合は、約1週間後に抜糸します。
通常、痛みはほぼなく、数分で終わります。
⚠️抜糸の前に糸が取れてしまった場合でも、特に問題ないことが多いですが、違和感や痛みがある場合は歯科へ。
完全に治るまでは2〜4週間かかります。
親知らずの虫歯を予防する方法
<日常的な口腔ケアの重要性>
日常的な口腔ケアは虫歯予防の基本です。まず、正しい歯磨きを習慣化し、少なくとも1日2回は磨くことを心がけましょう。さらに、歯ブラシだけでは届かない部分を清掃するために、フロスや歯間ブラシを使うことが重要です。また、口腔洗浄剤を使用することで、口内の細菌を減少させ、虫歯のリスクを下げることができます。これらを日常生活に取り入れることで、親知らずの虫歯を効果的に予防できます。
<定期的な歯科検診のすすめ>
定期的な歯科検診は虫歯予防に欠かせません。半年ごとに歯科医院を訪れ、専門家による検診を受けることを推奨します。定期的な検診により、虫歯やその他の歯の問題を早期に発見することができ、治療が簡単になります。また、歯科医師からのアドバイスを受けることで、効果的な口腔ケア方法や生活習慣の改善点を知ることができ、より良い予防策を講じることができます。
よくある質問(FAQ)
<親知らずの虫歯は放置しても大丈夫?>
親知らずの虫歯は放置することは推奨されません。虫歯は進行することで、痛みや腫れを引き起こすことがあります。また、周囲の健康な歯にも影響を与える可能性が高く、最終的には抜歯が必要になることもあります。定期的に歯科医師の診察を受け、早期に治療を行うことが重要です。
<抜歯後の痛みはどれくらい続くのか?>
抜歯後の痛みの持続時間は個人差がありますが、通常は数日から1週間程度です。痛みが強
い場合や長引く場合は、医師に相談することが大切です。また、痛み止めを使用することで快適に過ごすことができるため、医師の指示に従い適切に使用してください。