親知らずが痛い!その原因と避けるべき放置のリスク【歯科医監修】
25.12.24
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親知らずが痛む原因とメカニズム

親知らずの痛みは単なる『歯の痛み』ではなく、細菌感染や炎症、圧迫など複数の要因が関わる複雑なメカニズムによって起こります。
①智歯周囲炎による炎症反応
親知らずの周りの歯肉に細菌が感染して炎症を起こすことで強い痛みや腫れが生じます。特に親知らずが半分だけ生えている状態では、歯と歯肉の隙間に汚れが溜まり、細菌が繁殖しやすくなります。
②虫歯による神経の刺激
親知らずは歯ブラシが届きにくく、虫歯になりやすい歯です。虫歯が進行して、象牙質や歯髄(歯の神経)まで到達するとズキズキとした痛みを引き起こします。また親知らずの虫歯は隣の歯にも感染を広げ、痛みを増幅することがあります。
③生え方の異常による圧迫
親知らずが斜めや横向きに生えている場合、隣の歯を押すように成長し、歯根や骨を圧迫して痛みを感じます。顎やこめかみにまで痛みを感じることもあります。
④骨は歯肉の内部で起こる炎症
埋まったままの親知らず(埋伏智歯)の周囲では、見えない部分で歯肉や骨の内部に炎症が起きることがあります。この場合、歯肉の奥がズーンと痛んだり、顎の下のリンパ節が腫れることがあります。
⑤感染拡大による痛みの悪化
炎症が進行すると膿が溜まり、感染が骨や筋肉まで広がることがあります。この段階では痛み止めは効きにくく、発熱や頬の腫れ、顎のしびれなどの全身症状を伴うことがあります。
痛みの種類と特徴

親知らずの痛みにはいくつかタイプがあり、その原因や進行状態によって痛みが異なります。痛みの特徴を理解することで、どのようなトラブルが起きているかを早期に判断する手掛かりになります。
①ズキズキとした拍動性の痛み(炎症による痛み)
歯肉が赤く腫れ、ズキズキと脈打つように痛む場合は、『智歯周囲炎』が起きている可能性が高いです。これは親知らずの周囲に細菌が感染して炎症を起こすことで、腫れや熱感を伴うのが特徴です。痛み止めを飲んでも鎮痛剤が効きにくく、放置すると膿が溜まることがあります。
②噛むと痛い、圧迫感がある痛み(生え方の異常)
親知らずが斜めや横向きに生えて隣の歯を押している場合、噛んだ時に鈍い痛みや違和感、顎の奥の圧迫感を感じます。歯並びのバランスが崩れ、顎関節症やこめかみにまで痛みが広がることがあります。
③鈍く重い痛み(埋伏智歯の圧迫)
完全に生えていない『埋伏智歯』は、歯肉の中で神経や周囲組織を圧迫し、奥深くから響くような痛みを引き起こします。慢性的に続く場合が多く、レントゲン検査で状態を確認する必要があります。
④歯肉がしみる、ちくちくする痛み(初期虫歯や歯肉の炎症)
親知らずの周囲に軽い炎症や痛みがあると、冷たい水や甘いものがしみたり、ピリッとした軽い痛みを感じることがあります。初期の段階であれば処置も簡単ですが、放置すると痛みが強くなります。
⑤顎や耳、頬にまで広がる痛み(感染や膿の拡大)
痛みが顎や耳の下、頬まで広がる場合は、炎症や細菌感染が進行しているサインです。発熱やリンパの腫れを伴うこともあり、放置すると全身に影響を及ぼすこともあります。
痛みの発生タイミングとその原因

親知らずの痛みは、生え始めから抜歯後までさまざまなタイミングで起こる可能性があります。痛みの出る時期とその原因を知っておくことで、早めの対処や予防につながります。
①生え始めの時期
親知らずが歯肉の中で動き始める頃に、歯肉の腫れやムズムズした違和感、軽い痛みを感じることがあります。これは歯が正しい方向に生えず、歯肉を圧迫したり、炎症が起きたりするためです。部分的に歯が出てくると、食べかすや細菌が溜まりやすくなり、智歯歯周炎を起こすこともあります。
②生えかけ、半分埋まっている時期
親知らずが中途半端に生えている状態では、歯肉の下に細菌が繁殖しやすくなります。その結果、ズキズキとした痛みや腫れ、口が開けにくくなる症状が現れます。これが『智歯周囲炎』で、放置すると膿が溜まり、顎や頬まで炎症が広がる危険があります。
③成長しきった後(噛み合わせや圧迫による痛み)
すでに親知らずが生えている状態でも、歯並びのずれや噛み合わせの不調が原因で痛みが起こることがあります。特に斜めや横向きに生えた親知らずが隣の歯を押すことで、歯根や歯肉にストレスがかかり、慢性的な鈍痛や圧迫感を引き起こします。
④虫歯や歯周病による痛み
親知らずは奥にあるためブラッシングが難しく、虫歯や歯周病になりやすい歯です。虫歯が進行すると冷たいものや甘いものでしみる痛みを感じ、歯周病が進行すれば歯肉の腫れや出血、膿の発生にもつながります。
⑤抜歯後の痛み
親知らずを抜いた後も、一時的に炎症反応による痛みや腫れが起こります。通常は2〜3日で落ち着きますが、強い痛みが続く場合は『ドライソケット』の可能性があります。これは血のかさぶたが取れて骨が露出してしまう状態で、激しい痛みを伴うため、早期の再診が必要です。
自宅でできる応急処置と痛みを和らげる方法

◇痛みや炎症を和らげる自宅療法
親知らずの痛みは突然起こることが多く、夜間や休日などすぐに歯科を受診できない場合があります。そんな時は、自宅でできる応急的な対処法を行うことで、痛みや炎症を一時的に緩和できます。ただし、あくまで『応急処置』であり、根本的な原因の治療には歯科受診が必要です。
①冷やす(腫れや炎症の緩和)
腫れやズキズキとした痛みがある場合は、患部を冷やすことで炎症を抑えることができます。清潔なタオルで包んだ保冷剤や氷で頬の外側を10〜15分ほど冷やしましょう。冷やしすぎると血流が悪化して逆効果になるため注意しましょう。
②口腔内を清潔に保つ
痛みの原因となる細菌の繁殖を防ぐため、お口の中を清潔に保ちましょう。歯ブラシが届かない場合はうがい薬やぬるま湯でのうがいがおすすめです。強くすすぐと出血を悪化させる場合があるため、優しくゆすぐようにしましょう。
③鎮痛剤を使用する
市販の鎮痛薬は、一時的に痛みを抑える効果があります。ただし、用法と用量を守ること、また発熱や腫れが強い場合は自己判断での服用を控えるようにしましょう。
④食事内容を工夫する
硬いものや刺激のあるものは避けて、柔らかくて温かいものを摂るようにしましょう。痛い方と反対側で噛むことで痛みを軽減し、傷口の悪化を防げます。特に抜歯後は、おかゆやスープ、ヨーグルトなどがおすすめです。
⑤睡眠と姿勢に注意
寝る時は頭を少し高くして横になると、血流が穏やかになり腫れや痛みが和らぎます。また、十分な睡眠をとることで体の回復力を高めることも大切です。
⑥アルコールや喫煙は控える
アルコールやタバコは血流に影響するため、炎症を悪化させる原因となります。特に抜歯後数日間は治りが遅くなったり、ドライソケットを引き起こす恐れがあるため避けましょう。
親知らずの抜歯が必要な理由とそのメリット
親知らずは生え方や位置によっては抜歯が必要となる歯です。
①抜歯が必要になる主な理由
・智歯周囲炎
・虫歯や歯周病の原因となる
・歯並びや噛み合わせへの影響
・顎の痛みや神経圧迫
②親知らずを抜歯するメリット
・炎症や痛みの再発を防げる
・隣の歯を守れる
・口臭や不快感の改善
・将来的なトラブルを予防できる
③抜歯の判断は歯科医師との相談が重要
全ての親知らずが抜歯する必要があるわけではありません。正しく生えていて、噛み合わせに問題ない場合はそのまま残しても問題ないケースもあります。しかし、痛みや腫れを繰り返す場合や歯並びに影響がある場合は、早めに歯科医師に相談し、CT撮影などで状態を確認することが大切です。
歯科医院での診断と治療の重要性

①精密な診断で原因を特定
親知らずの状態は人によって異なります。
・歯の生え方や角度
・神経や骨との距離
・炎症や膿の有無 など正確に確認します。
②専門的な治療による安全性の確保
親知らずの抜歯は歯科医師の高い技術と経験が求められます。自己判断で無理に放置すると痛みや腫れが悪化したり、智歯周囲炎や感染を起こすリスクがあります。
歯科医院では、
・局所麻酔や笑気麻酔、静脈内鎮静法など、痛みに配慮した医療
・清潔な環境下での処置による感染防止
・術後のケアや再診管理による再発予防 といった安全で効果的な治療が行われます。
③治療後のケアと再発予防
抜歯後は、炎症や細菌感染の予防が大切です。歯科医院では一人ひとりの状態に合わせて、
・適切な抗生剤や鎮痛剤の処方
・傷口を守るための生活指導
・再診による治癒の確認 などを行い再発防止と早期回復をサポートします。
【定期検診での診断と治療の重要性】

①早期発見で治療の負担を軽減
初期の虫歯や歯周病はほとんど自覚症状はありません。定期検診では歯科医師がレントゲン検査や口腔内チェックを行い、わずかな変化も見逃さず診断します。早期に治療することで痛みや腫れが出る前に進行を止めることができ、治療期間の短縮や費用の軽減につながります。
②隠れたトラブルの予防と管理
定期検診では親知らずの生え方や顎の状態も確認ができます。親知らずが正しく生えていない場合は炎症や細菌繁殖を引き起こす可能性があり、放置すると腫れや痛みが強くなることがあります。歯科医師による定期的な確認で、抜歯の必要性や最適な治療時期を見極めることができます。
③治療だけでなく予防のサポート
定期検診では歯科衛生士によるバイオフィルムや歯石の除去などのメインテナンスも行います。これにより、細菌の繁殖を抑え、歯周病や虫歯の再発を防止します。また、患者さんの生活習慣に合わせて、歯磨き指導や食生活アドバイスも受けられるため、長期的にお口の健康を守ることができます。
【まとめ】
親知らずの痛みは炎症や虫歯、圧迫などさまざまな要因が重なって起こります。放置すれば腫れや感染が広がり、強い痛みや全身症状を引き起こすこともあります。早めの歯科医院受診によって、親知らずの状態を正確に把握し、将来的なトラブルを未然に防ぎましょう。信頼できる歯科医師に相談し、安心して治療を受けることが大切です。
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