虫歯による口臭の原因と対策|歯科医が教える進行段階別のケア方法
25.10.27
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虫歯による口臭の原因と対策|歯科医が教える進行段階別のケア方法
【虫歯が引き起こす口臭のメカニズム】
虫歯が口臭を引き起こすメカニズムは、単純に『歯が痛む』『歯に穴が開いた』だけでなく、口腔内の細菌活動や炎症の影響によって生じます。
①虫歯と細菌の関係
・虫歯はミュータンス菌などの虫歯菌が歯の表面に付着し、糖分を分解して酸を作ることで発生します。
・この酸が歯を溶かし、穴を作ります。
・虫歯が進行すると歯の内部(象牙質や歯髄)に達し、死んだ組織や汚れが残りやすくなります。
②口臭の原因物質
・虫歯の穴や亀裂に残った食べかすや歯垢(プラーク)が細菌によって分解されます。
③虫歯による炎症と膿
・C3〜C4の重度の虫歯では、虫歯が神経まで到達している状態です。
・炎症が広がると膿が発生することがあります。膿の腐敗臭も口臭の原因となります。
・炎症による出血や組織の壊死も口腔内の異臭を強める要因の一つです。
④二時的な要因
・虫歯があると噛みにくくなり、それによって歯磨きが不十分になり、歯垢などの汚れがさらにたまる。という悪循環により、口腔内環境が悪化し、口臭もひどくなります。
虫歯そのものは口臭の原因にはならず、虫歯による細菌活動や腐敗物、炎症、膿などが主な原因となります。進行した虫歯は口臭をひどくさせるだけでなく、炎症は排膿によって生活の質も低下します。早期発見と日々のブラッシング、定期検診などが口臭予防にもつながるのです。
【虫歯の臭いを確認する方法】
◇自分でできる口臭チェック
虫歯や口臭は自分では気づきにくいですが、セルフチェックの方法はいくつかあります。
①手のひらチェック
・手のひらを清潔にして『は〜』と息を吹きかけてみる。
・すぐににおいを嗅いで臭くないか確認する。
(ただし、慣れてしまって気づかないこともあります。)
②舌チェック
・舌ブラシや清潔なガーゼで舌を擦ります。
・白や黄ばんだ汚れがついたらその部分を嗅いでみましょう。臭みを感じたら口臭の可能性大です。
(舌苔:舌の汚れは細菌繁殖のサインです。)
③デンタルフロスでチェック
・フロスを歯と歯の間に通して、その糸を嗅いでみましょう。
・強いにおいや腐敗臭を感じた場合は、虫歯や歯周病の可能性があります。
(特に毎回同じ場所がにおうのであれば、その歯にトラブルがあるかもしれません。)
※自分ではにおいに慣れてしまい、自分の口臭に気付けない事もあります。

◇専門家による診断
虫歯による口臭やその原因を正確に突き止めるには、やはり専門家による診断が必要不可欠です。自分でのチェックは参考程度にしかならず、歯科医師による診断や検査を受けることで原因を明確にし、適切な治療に繋げましょう。
①問診と視診
・痛みの有無、口臭が気になるタイミング(朝、食後など)を確認。
・虫歯の有無や歯の欠けがないか、詰め物や被せ物の状態を確認。
②レントゲン検査
・見た目ではわからない歯の内部や歯根の状態を確認。
・歯のヒビや破折、膿などの異常がないか確認。
③歯周病のチェック
・歯周ポケットの深さを測定したり、出血の有無がないか確認。
(歯周病は虫歯以上に口臭の原因になることが多く、必ず合わせて確認します。)
④口臭測定器(ハリメーターなど)
・呼気中の口臭原因物質の濃度を測定する。
・客観的な口臭の有無や強さが確認できる。
⑤唾液検査
・唾液量や酸性度、細菌の種類を確認。
・虫歯菌や歯周病菌の活動性を把握することで、原因特定につながる。

【虫歯による口臭の対策】
虫歯が原因で起こる口臭の対策には根本的に虫歯治療が1番の対策になりますが、それまでの間や予防のためにできる事も多くあります。いくつか紹介していきます。
①虫歯の治療:根本的な対策
・虫歯治療:虫歯を削って、詰め物や被せ物をする。
・歯周病や詰め物の異常がないかも合わせてチェック:複合的な原因が多いため総合的な診断が必要。
②自宅でできるセルフケア
・正しい歯磨き習慣:寝る前の歯磨きは特に丁寧に。デンタルフロスや歯間ブラシも併用する。
・フッ素入り歯磨き粉を使用する:虫歯菌の活動を抑制し、再石灰化を促進の効果あり。
・舌苔(舌の汚れ)を除去する:舌ブラシで清掃する。舌苔は口臭の大きな原因の一つです。
・口腔内の乾燥を避ける:こまめな水分補給やキシリトール摂取で唾液の分泌を促進する。
③食生活の改善
・砂糖の摂取を控える。
・だらだら食べ、飲みを控えて、食事の間隔をあけることで唾液の中和作用を活かす。
④応急的なエチケット対策
・マウスウォッシュで一時的ににおいを抑える。
・ミントタブレットやガムは一時的には効果があるが、原因の解決にはならないので注意。
【虫歯治療の流れと方法】
◇初診、診断
・問診と視診→レントゲン→診断
◇虫歯の進行段階別の治療法
①CO(初期う蝕、脱灰)
・エナメル質はわずかに溶けた状態
・フッ素塗布やブラッシング指導で再石灰化を促す
・削る必要はない
②C1(エナメル質虫歯)
・エナメル質に小さな穴がある状態
・削って、レジンを詰める簡単な処置
・症状が軽ければ経過観察の場合も十分にある
③C2(象牙質まで進行)
・冷たいものや甘いものがしみるなどの症状が出る段階
・虫歯の部分を削って、レジンやインレーを入れる治療
・大きな虫歯の場合は被せ物をする場合もある
④C3(神経まで到達)
・ズキズキとした強い痛みや夜間痛がある
・根管治療(神経治療)が必要になる
・神経の治療の後は被せ物を入れる
⑤C4(歯根だけ残った状態)
・神経が壊死して、一時的に痛みが和らぐ
・歯の大部分が失われて、根っの部分だけの状態
・抜歯が必要になることが多い
・その後、ブリッジや入れ歯、インプラントを入れる
◇治療後のケア
・定期検診で虫歯の再発を防ぐ(最低でも3〜6ヶ月に1回の受診がおすすめ)
・フッ素塗布やシーラント(特に小児)は再発防止に効果的
・放置すると治療が大がかりとなり時間も負担も増加。最終的には抜歯に至るリスクがある。

【虫歯以外の口臭の原因】
口臭の原因はさまざまです。大きく分けると口腔内由来のものと全身由来のものがあるので整理していきましょう。
①歯周病
・口臭の原因で一番多い原因が歯周病によるもの
・歯周ポケット内で細菌が繁殖して、膿や血液が混じった特有のにおいを発生させる
・歯肉の腫れや出血、歯の揺れがある場合は要注意

②舌苔(舌の汚れ)
・舌の表面に付着した汚れ
・食べかすや細菌、剥がれた粘膜などがたまり、悪臭の原因に
・舌ブラシで清掃することで改善が可能

③口腔乾燥(ドライマウス)
・唾液の量が少ないと自浄作用が弱まり、細菌が繁殖しやすくなる
・口呼吸やストレス、加齢、薬の副作用などが原因となる
④食べ物、嗜好品
・にんにく、ニラ、玉ねぎなど強いにおいの食品によるもの
・アルコールやタバコも口臭の大きな要因となる

⑤入れ歯や補綴物の汚れ
・入れ歯や被せ物に汚れがたまると、細菌が繁殖してにおいが発生する
・入れ歯は毎日丁寧にお手入れを。

⑥歯科以外の病気
・消化器系の疾患:胃酸や食べ物の逆流で口臭が発生する
・糖尿病:血糖コントロール不良時に甘酸っぱいアセトン臭が発生する
・肝、腎疾患:代謝異常により特有の口臭が発生する
・扁桃腺の膿栓:のどの奥に膿の塊ができて強いにおいを発する

口臭の8割以上は口腔内のトラブルが原因と言われています。しかし、改善しない場合は全身疾患が関係していることも…。その場合は医科の受診が必要となります。
【まとめ】
虫歯による口臭は、細菌の繁殖や炎症、排膿によって強くなります。進行した虫歯は口臭が悪化するだけでなく、痛みや生活の質の低下にもつながるため早期治療が重要です。セルフチェックは可能ですが限界があり、歯科医院での診断が確実です。日々のケアと定期検診を組み合わせることで虫歯と口臭の両方を予防することができます。
プルチーノ歯科・矯正歯科神宮前院では定期検診も受け付けています。診療の予約は24時間Webで可能です。
