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【歯科医監修】これで安心!親知らず抜歯後の食事ガイド|回復を助ける方法
25.11.07
カテゴリ:医院からのお知らせ
【親知らず抜歯後の食事に関する基礎知識】
◇抜歯後の食事が重要な理由
①傷口の治癒を左右するから
親知らずを抜いた後の歯肉には『血餅(けっぺい)』という血の塊ができます。これは傷口を保護する絆創膏のようなものです。刺激の強い食事や硬い食べ物を摂ると、この血餅が取れてしまい、治りが悪くなったり、『ドライソケット』という激しい痛みを伴う炎症を起こすことがあります。
②感染を防ぐため
抜歯後の傷口はとてもデリケートで、細菌が入り込みやすい状態です。汚れや食べかすが傷口に入り込むと、炎症や化膿の原因となります。柔らかい食事や口腔内を清潔に保つ工夫をすることで感染リスクを大きく下げることができます。
③出血や腫れを防ぐため
熱い食べ物やアルコールなどは血行を促進し、再出血や腫れを悪化させるおそれがあります。そのため、抜歯後は『常温〜ぬるめ』の食事を心がけましょう。
④栄養補給によって回復を早めるため
抜歯後は体が傷口の修復を行なっているため、栄養バランスの取れた食事が大切です。特に以下の栄養素が効果的です!
・タンパク質(豆腐、魚、卵など):組織の再生を助ける
・ビタミンC(野菜、果物など):炎症を抑える
・ビタミンB群(レバー、納豆、卵):代謝と治癒を促進
⑤痛みを悪化させないため
硬いものや刺激物を食べると神経や歯肉に負担がかかり、痛みが増すことがあります。特に抜歯後1〜3日はやわらかく、温かすぎない食事が痛みを抑えるコツです。

◇抜歯直後の体の状態と食事の関係
治り方や痛みの強さに直結する重要なポイントです。以下に歯科的な観点からわかりやすくまとめます。
①傷口はとてもデリケートな状態
抜歯直後の歯肉は外科的な傷口が開いた状態です。体はすぐに出血を止めようとして血がかたまり、『血餅』というかさぶたのような膜を作ります。この血餅が傷口を守り、骨や歯肉を治癒させる土台となります。食事で刺激を与えてしまうと、血餅が剥がれてしまい『ドライソケット』という強い痛みを伴う炎症を起こしてしまうことも…。
②体は傷の修復モードに入っている
抜歯後は体が炎症反応を起こし、治癒のためにエネルギーや栄養を必要としています。つまり、免疫力と修復力がフル稼働している状態です。そのため、食事から次のような栄養素を意識して摂ることが大切です。
・タンパク質:傷の修復
・ビタミンC:炎症を抑え、コラーゲンの生成を助ける
・エネルギー源:体力維持
・カルシウム、ビタミンD:骨や歯肉の治癒をサポート
③麻酔や出血の影響で感覚が鈍っている
抜歯直後はまだ麻酔が効いている状態です。この時に食事をすると次のようなことが起きる可能性があります。
・唇や頬を誤って噛んでしまう。
・熱いものを食べて火傷してしまう。など
※麻酔が完全切れるまで(2〜3時間程度)は、食事を控えるようにしましょう。
④血流が高まると出血が再発する
抜歯後は少しの刺激でも再出血することがあります。熱い食事やアルコール、激しい運動は血行を促進してしまうため再出血、腫れ、痛みの悪化につながります。
※抜歯当日はぬるめ、やわらかい、刺激の少ない食事が鉄則です。
⑤消化に良い食事で体への負担を減らす
体が傷の修復に集中している時は、胃腸への負担を少なくすることも大切です。消化の良い食事を心がけることでエネルギーを免疫と修復に集中させることができます。おすすめのメニューはこちらです。
・おかゆ
・具なしの味噌汁やスープ
・豆腐、茶碗蒸し、ヨーグルト
・柔らかい煮魚や野菜など

【抜歯直後の食事の注意点】
◇麻酔が切れるまでの食事制限
①麻酔が効いている間、食事をしてはいけない理由
抜歯後すぐはまだ麻酔が効いている状態です。この間に食事をすると次のようなトラブルが起こる可能性があります。
・頬や唇、舌を噛んでも気づかない
→感覚が鈍っているため噛んでしまっても気づかず、出血や腫れを起こすことがあります。
・熱いものを食べてやけど
→温度の感覚も鈍っているため、口の中を火傷してしまうこともあります。
・傷口に刺激を与え、出血を再発させてしまう
→食べ物の刺激や圧で血餅が剥がれると治りが悪くなってしまいます。
②食事を再開して良いタイミング
麻酔は通常、抜歯後2〜3時間程度で切れます。(個人差があるため完全に感覚が戻るまで待ちましょう。)確認の目安は次の通りです。
・唇や舌のしびれがなくなった。
・飲み物を飲んでも違和感がない。
・口を動かした時の感覚が正常に戻っている。これらを確認してから食事を再開しましょう。
③食事再開の注意点
麻酔が切れた後も抜歯直後はまだ傷口がデリケートです。最初の食事では次の点に気をつけましょう。
・柔らかく、冷ました食事(おかゆ、スープ、豆腐など)
・抜歯した側では噛まない(反対側でそっと咀嚼)
・熱い、辛い、酸っぱいものは避ける
・ストローや炭酸飲料は避ける(吸う動作で血餅が剥がれる可能性がある)
④麻酔後すぐに摂取して良いもの
食事はできませんが、控えめな水分補給は可能です。ただし以下のことに注意してください。
・水やぬるま湯など刺激のないものを少しずつ摂取しましょう。
・強くうがいはしないでください。(血餅が取れてしまうおそれがあります。)
◇抜歯当日のおすすめ食事
抜歯当日は『体が治癒を始める大事な初日』です。食事内容が治り方を左右します。抜歯当日のおすすめメニューを紹介します。
①やわらかくて刺激の少ないメニュー
・おかゆ(プレーンタイプ)
・雑炊(具を細かく)
・やわらかいうどん(温かすぎない温度で)
※食べる時は抜いた方とは反対側で噛みましょう。

②栄養を蓄えるおかずメニュー
・絹ごし豆腐(冷奴など)
・茶碗蒸し(具は細かく、冷ましてから)
・スープ(具なし味噌汁、ポタージュなど)
・具なし卵スープ(たんぱく質補給に)
※栄養バランスをとるためにタンパク質を少し加えると回復が早まります。

③デザート、軽食メニュー
・ヨーグルト
・プリン
・バナナ
・りんごのすりおろし
※冷たい食べ物は痛みを和らげる効果もありますが、冷たすぎると刺激になるため注意しましょう。

◇食後の注意点
・食後すぐのうがいや歯磨きは避けましょう。(血餅が取れるおそれがあるため)
・食後30分以上経ってから優しくうがいをしましょう。
・抜歯したところに食べかすがついて気になる場合でも無理に歯ブラシで取らない。
【抜歯後数日間の食事のポイント】
◇抜歯後に控える食べ物、飲み物
①かたい食べ物:せんべい、ナッツ、スルメ、フランスパンなど
→噛む刺激や衝撃で傷口を刺激し、血餅が剥がれる可能性があります。
②粘着性のある食べ物:ガム、キャラメル、餅、グミなど
→傷口や抜歯したところにくっつきやすく、感染や出血の原因になります。
③小さくて入り込みやすい食べ物:ごま、ナッツのかけら、ポップコーン、ふりかけなど
→抜歯後の穴(抜歯窩)に入り込み、炎症や化膿の原因になります。
④刺激の強い食べ物:唐辛子、カレー、わさび、濃い味付けのものなど
→刺激で傷口がしみたり、炎症が長引くことがあります。
⑤熱い食べ物:ラーメン、鍋料理など
→熱で血管が拡張し、再出血するおそれがある。
⑥酸味の強い食べ物:柑橘類、酢の物、ドレッシングなど
→酸がしみて、炎症が起きることがある。
⑦炭酸飲料:コーラ、サイダー、エナジードリンクなど
→炭酸の刺激で痛みや違和感が増す事があります。糖分が多く細菌が繁殖しやすくなります。
⑧アルコール類:ビール、ワイン、焼酎、カクテルなど
→血流を促進して、出血や腫れが悪化します。麻酔や抗菌薬との相性も悪いです。

◇栄養を意識したメニュー
抜歯後は『食べられない』より『どう栄養を摂るか』が大切です。傷口を治す上で必要な栄養素は次の5つです。
①タンパク質:組織修復、免疫力向上(豆腐、卵、魚、鶏むね肉など)
②ビタミンC:コラーゲン生成、抗炎症(じゃがいも、ブロッコリー、キウイなど)
③ビタミンA:粘膜の修復促進(にんじん、かぼちゃ、レバーなど)
④ビタミンB群:代謝促進、口内炎予防(納豆、卵、玄米、豚肉など)
⑤ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛):骨、歯の再生、免疫維持(牛乳、チーズ、しらす、小松菜など)

《メニューの例》
①抜歯後3〜5日後
傷口の回復が進んできたら、柔らかく煮た食材を中心に取り入れましょう。
・やわらかい煮うどん+温泉卵
・サバの味噌煮(ほぐして)+おかゆ
・豆腐と野菜の煮込み
・白身魚の蒸し煮
・かぼちゃのそぼろあんかけ
②抜歯後6〜7日後
出血や腫れが落ち着いたら、徐々にバランスの取れた食事へ戻していきましょう。
・やわらかいご飯+味噌汁+焼き魚+温野菜
・親子丼
・豆腐入りハンバーグ+マッシュポテト
・納豆ご飯+小松菜のおひたし
・スープカレー
③回復を早める栄養バランスのコツ
・タンパク質とビタミンCを一緒に摂る。
・発酵食品で腸内細菌を整える。
・鉄、亜鉛、カルシウムを意識して歯と骨の再生をサポート。
・刺激物、熱い食事、かたい食材は1週間程度控える。
【通常の食事に戻すタイミング】
焦らずに回復を感じながら段階的に戻すことが安全で確実です。もし違和感や痛みが続く場合は、自己判断せずに歯科医院に相談しましょう。
◇通常食に戻す目安
・痛みをほとんど感じない。:噛んでも痛みを感じない、鎮痛剤不要。
・出血や腫れがない。:傷口が落ち着いている、口を開けても違和感がない。
・しびれやつっぱりがない。:顎や頬に違和感が残る場合は、もう少し様子を見ましょう。
・食べ物がしみない。:冷たい、熱いものでしみないのは回復に向かっているサイン。
【ドライソケットのリスクと対策】
ドライソケットとは、抜歯後にできる血餅(かさぶた)が何らかの理由で失われ、骨がむき出しになる状態のことです。通常は血餅が傷口を覆い、歯肉の再生を助けますが、これが取れてしまうと骨や神経が露出し、激しい痛みや治りの遅れを引き起こします。

①ドライソケットの主な原因
・強いうがい、口のすすぎすぎ:血餅が取れてしまう。
・ストローや喫煙による『吸う動作』:陰圧で血餅が剥がれやすくなる。
・抜歯直後の過度な運動や入浴:血流が活発になり、再出血や血餅の不安定化を招く。
・感染や炎症:口腔内の細菌が増えることで血餅が溶けやすくなる。
・女性のホルモンバランス:排卵期や生理中は血餅ができにくく、ドライソケットのリスクがやや高まる。
②ドライソケットの症状
次のような症状がある場合はすぐに歯科医院を受診してください。放置すると治癒が遅れます。
・抜歯後2〜3日後に強い痛みが再発。
・鎮痛剤の効き目が悪い。
・傷口から悪臭がする。
・骨が見える、白っぽくなっている。
③ドライソケットを防ぐための対策
『血餅を守ること』が治癒を早める最大のポイントです。
・強いうがいをしない。
・ストローやタバコを吸わない。
・熱い食べ物や飲み物を避ける。
・舌や指で傷口を触らない。
【まとめ】
親知らずの抜歯後は、適切な食事管理が回復を早め、合併症の予防にもつながります。無理をせず、やわらかく栄養のある食事を意識しながら、段階的に通常の食事に戻しましょう。気になる症状や不安がある場合は、自己判断せずに歯科医院へご相談ください。正しいケアとサポートで安心して治癒を迎えましょう。
